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VOCA展とは
−その役割と見どころ−

剱持邦弘

VOCA賞中山玲佳<或る惑星> 撮影者/上野則宏
VOCA賞中山玲佳<或る惑星> 撮影者/上野則宏

  ”VOCA展”は、一九九四年に始まりました。毎年開催され、今年で十八回目になります。『VOCA』は、『THE VISION OF CONTEMPORARY ART』の定冠詞を除いた頭文字のアルファベットを合わせたものです。「ヴォーカ」と呼びますが、「ヴォカ」と音引きを省略して呼ぶ人もいます。造語ですから、曖昧なままです。現代美術という性格のある面を反映しているのかもしれません。副題が、「現代美術の展望|新しい平面の作家たち」になります。模糊とした「現代美術」を少しでも理解されるようにと、そんな思いでした。初期の頃、入館者については二百人くらいを想定していました。ところが近年、桜花期間中の開催ということもあるのでしょうが、週末には千人を超える来館者で賑わうようになりました。「継続は力なり」でしょうか、これまでの”VOCA展”の受賞者達が美術界に大きく羽ばたいて活躍していることが影響しているようです。

展示作品は、絵画に限らず平面作品ですから、多種多様な表現、技法、素材が登場します。出品作は厚さ十センチ以内可ということから、薄型テレビを使用したビデオ作品が出品されたこともあります。技術的な進歩で、当初予想しなかった例の一つです。今後どのような作品が発表されるのか楽しみなところです。

展覧会は最初に、実行委員会が、現代美術に造詣の深い、全国の美術館学芸員、研究者、ジャーナリストを対象に、毎回推薦委員を選出します。そして、彼らが将来を嘱望される四十歳以下の作家を、初夏の頃までに推薦します。今回は、三十六名の作家が推薦され、平面作品の新作が集まりました。出品者の意気込みを感じさせる、個性的な力作が揃いました。選考会で、VOCA賞一名、VOCA奨励賞二名、佳作賞二名が選ばれました。

今年の受賞者も、昨年に引き続いて全員女性でした(男性ガンバレ!)。グランプリに当たるVOCA賞には、大阪在住の中山玲佳さん或る惑星が選ばれました。中山さんは、一九七四年大阪に生まれ、京都市立芸術大学大学院を修了。七年間のメキシコ留学から帰国して、制作を続けています。受賞作は、暗示的な構成で興味をそそられます。横長の画面左側、精細に描かれた狼の顔を細かに色分けされた帯が縦断しています。ほぼ中央のカラフルな背景に狼のシルエットが浮かび上がっています。明と暗、現実と幻想でしょうか。彼女は受賞を知って次のようにコメントしています。『メキシコにいたというその事実は私の中に「穴」として残っているのである。…今回の「或る惑星」もそのなかから出てきたもの。それは、私の中にある「穴」への探検。…日常と非日常、現実と夢、外側と内側の関係性を考えるときに、なにかしらの手がかりになりそうな気がするこの行為を、もう少し続けてみようと思う』。中山さんの今後の精進を期待したいと思います。

前後しましたが、この展覧会は、第一生命相互会社(現在の第一生命保険株式会社)の創立九十周年記念事業の一環として、誕生しました。現在も同社の社会貢献活動として、継続されています。また、受賞作品は、日比谷の本社ビルのロビーに展示され、来場者から親しまれています。併設のギャラリーでは、受賞者の新作個展開催を援助しています。企業のメセナ活動が後退する中、支援いただいていますことをあらためて感謝しています。”VOCA展”では、同時代を生きる作家本人や推薦者の声に直に触れることが出来ます。会期中の土、日には、受賞作家や学芸員のトークがあります。また、会期初日の夕方には、「隠された物語」というテーマでシンポジウムを開催します。詳しくは美術館にお問い合わせください。

お気軽な気持ちで、お花見の途中、現代美術に親しんでみてください。

(けんもつくにひろ・上野の森美術館)

 


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