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除夜の鐘と私   須賀光一



上野精養軒の入り口の丘に、むかしながらの鐘楼があり、これが寛永寺の「時の鐘」です。私どもは毎年ここで除夜の鐘を撞いております。大晦日の夜十一時をすぎると、当のれん会の会員はじめ多くの方々が集まり順番を待ちます。寒い中に迎えるこの光景に、いよいよ年の変わり目を実感します。そして狭い階段を順にあがって鐘を撞きます。

鐘は上野か浅草か。むかしは一刻(約二時間)ごとに撞いて江戸の町々に時を告げていました。その音色と、撞木をあやつる手にのこる感触と、なんともすがすがしい心地になります。除夜の鐘の百八回は人間の煩悩の数といわれ、その煩悩をふり払い、良い年を迎えるのだとか。

今年のこの国は、三月十一日の東日本大震災、大津波、そして原発崩壊と、戦後最大の災害事故が起こっています。多くの方々が亡くなられ、また町ごとの避難にもせまられた現状です。日本がたいへんな危機を迎えています。

海外でも、トルコの地震、タイの大洪水、そしてヨーロッパの金融危機等、世界中になにかおかしいたいへんな事が起こっています。それらの出来事も日本経済に大きな影響をあたえる時代です。

このようなときに除夜の鐘がどんな意味合いをもつのでしょうか。困難や災害は、そのときはたいへん苦しい。しかし長い目で見ますと、過去の困難がのちにはたいそうありがたいアドバイスになっている事があります。どんなに苦しい事態にも、知見を深めて立ちむかえて「それで良かった」。強引かもしれませんが言葉の力を借りて良かったといっていると良いことが起こるようです。除夜の鐘を「これで良かった、ありがとうございます」という気持ちで撞くのはどうでしょうか。

鐘を撞いたあとは、もう年改まった時刻なので、五條天神に初詣にお伺いしています。私どもの氏神様です。神様に私はお願い事はしません。年々にこうして新春を迎えられて感謝するばかりです。どんな人間もいずれは死を迎えます。いま生きていることがうれしいのです。

初詣を終えて、わが家では、家族そろってお墓参りにゆきます。それから子供連れで水族館などへ行って楽しみ、そうしてみんなで食事にゆきます。



時の鐘(写真提供:筆者)

この習慣は代々つづいております。小さいときから墓参を楽しいものと思わせるべく、先代からおこなってきたことです。私たちが現在あるのは、両親がいて、おじいちゃん、おばあちゃんがいて、多くの先祖の命をひきついでいるのだ、という事実に気づかせたかったのでしょう。

われわれの先祖は、関東大震災、東京大空襲の焼野原から、再度立ち上がりました。凄いことです。ひきついでまいらねば。こんな時代だからこそ、なおさらに。「今年は良くなる」という思いで初詣でにおでかけになるのはいかがですか。「博物館で初詣」とは、東京国立博物館の例年の企画で正月二日からお客様をお迎えします。ゴージャスな生け花で飾られ、獅子舞、和太鼓などの実演もたのしく、館内には、所蔵の名品国宝級が展示されて、たっぷり一日かけてみる価値があります。

上野公園の中には、おなじく二日から開場の施設が種々あります。上野動物園では、園長がお迎えしての慶祝新年の催しがあります。

街へ下りれば、私のお店<洋食黒船亭>も二日から営業して、お待ちしております。小誌「うえの」も、お山の文化ゾーンと街をつなぐタウン誌として誕生し、半世紀をこえました。老舗の誇りとともに毎月新しい情報をお伝えしていきます。来年もたのしみにご覧になってください。困難をのりこえて新年が、皆々様にすばらしい年でありますように。

(すがこういち・上野のれん会会長)

 


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