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両生爬虫類鑑あし 澤田大地

フタモントビガエル

フタモントビガエル

日差しがだいぶ強くなってきた今日この頃、田畑の水も温み、そろそろ、カエル達の合唱が聞こえてきそうな気配がします。カエルと言えば、古来より日本人には身近な存在となっており、古くは万葉集や芭蕉・一茶の句でも季語として使用されて来ました。さらに「かえるのぴょん太」という歌があるのを御存じでしょうか?歌の中には「かえるのぴょん太はすごいな〜三段跳びで2メートル」、という歌詞があり、カエルはその跳躍力の高さでも有名です。カエル類は後肢の筋肉が前肢と比べてはるかに発達しているため、多くのカエルが自分の体長の2〜10倍の距離を跳ぶことができます。

さらに、東南アジアにはトビガエルと呼ばれるカエルがいるのですが、このカエルは樹上棲で、幹から幹へ飛び移って移動します。実験では、11・6メートルの高さから、なんと最大29・3メートルの距離を飛んだという記録があるそうです。トビガエルがどのようにして、そんな長距離を飛ぶことが出来るのでしょう?じつは、その秘密も「あし」にあるのです。通常、カエル類の指の間には泳ぐために使う「水かき」があります。トビガエルの仲間は他のカエルより水かきが大きく発達していて、幹から幹へと飛び移る時に、この大きな水かきを広げて紙飛行機のように滑空する事が出来るのです。

両生類・爬虫類にはトビガエルのような特殊な「あし」を持つものがいる一方、退化して「あし」が無くなったものもいます。代表的なのものはヘビですが、じつは「四肢が無い爬虫類はすべてヘビ」、と言うわけではありません。特設展で展示している、「ヨーロッパヘビトカゲ」という爬虫類は、四肢が無く、ロープ状の体をしているため、一見ヘビのように見えますが、れっきとしたトカゲの仲間です。現在ではヘビトカゲの仲間以外にも複数のトカゲで足が無い種が生息しています。では、なぜヘビやヨーロッパヘビトカゲは四肢が無くなったのでしょう?色々な説があり定かではありませんが、「地中に潜ったり、岩場の狭い??間に隠れる時、四肢が邪魔になる事が多かったため」だと考えられています。以上のことからも動物の「あし」は、ただ歩くためにだけあるのでは無いということがあります。

左:スッポンモドキ 中:ヨーロッパヘビトカゲ 右:パンサーカメレオン


左:スッポンモドキ 中:ヨーロッパヘビトカゲ 右:パンサーカメレオン

足をよく観察することで、その動物がどのような場所で生活し、どのような暮らしをしているのかさえ見えてきます。むろん、水中で生活する者には水中に適した、樹上で生活する者には樹上に適した「あし」の形態を持っています。そして、さらに面白いことに、両生爬虫類と哺乳類や鳥類はまったく違う生物ですが、同じような環境で生活していると「あし」は同じような形になることがあるのです。例えば水中で生活するアシカの前足は、泳ぐのに適したオール状の形をしています。同じように水中生活をおくるウミガメ類やスッポンモドキの足も泳ぐのに適したオール状の形をしています。他にも、多くの鳥は樹の枝につかまりやすいように、指が向かい合う「対向指(たいこうし)」と呼ばれる形をしていますが、これは樹の上で生活するカメレオンの足にも見られる特徴です。普段、何気なく見ている両生爬虫類ですが、その「あし」には、皆さんが知らない沢山の秘密が隠されています。

上野動物園両生爬虫類館では、特設展示「両生爬虫類鑑あし」を12月28日まで開催しており、両生類・爬虫類の様々な「あし」とその機能的な役割について、生体の展示をとおしてご紹介しています。一方、見ただけでは確認しにくい足の機能については動画や骨格標本、さらには情報パネルを用いて解りやすいように紹介しています。普段、動物園に来て注目するのは動物の姿・形、模様などかもしれません。しかし、「あし」を観察することによって今まで知ることが無かった動物の暮らしぶりが見えて来ると言うことも多々あるのです。体の一部分である「あし」を見て、多角的に想像力を大きく膨らますと言うのも動物園の楽しみ方の一つです。

(さわだだいち・恩賜上野動物園飼育展示課は虫類館飼育展示係)

 


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